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ロジスティクス研究部

当研究部では、物流業界を様々な観点から研究し、業界の発展とサービス向上のヒントを発信していきます。

2021.02

第八回:物流業界の今後の動向

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現在の物流業界は「変革期」の最中。時代の変化により需要は増加する一方で、多くの企業は様々な問題に直面しており、需要と供給のバランスが崩れつつある。そのため物流企業は今起きている課題と真摯に向き合い、従来とは異なる方法を模索していかなければならないのだ。そこで当記事では「物流業界の今後の動向」と題し、物流業界が抱えている課題と企業の取り組みについて掘り下げていく。

物流の需要増加の背景と、物流業界の課題

現在の物流業界は需要と供給のバランスが崩れつつある。まずは、物流の需要が増加した背景と、物流業界が抱えている課題について説明したい。

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配達需要 増加の背景
引用:「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」(経済産業省)https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf

物流の需要増加の背景には「EC市場の規模拡大」が影響している。
2019年度の経済産業省の調査結果によると、日本国内におけるB to C(Business to Consumer)向けのEC市場規模は19兆3,609億円にも及び、前年と比較すると市場は7.65%も拡大した。過去10年の数値をみても、EC市場の規模は「右肩上がり」と言える。
さらに2021年現在は新型コロナウイルスの影響もあり、あらゆる分野でECへ注力する企業が増加した。洋服や家具など生活品や飲食関係、本やゲームなどの娯楽品を購入する際、実店舗まで足を運ぶ人は減り、ECサイトを介した購入が一般化している。

また近年ではフリマアプリなどを使った個人間取引、C to C(Consumer To Consumer)のEC利用が急増した。このC to C向けの市場規模は1兆7,407 億円(2019年時点)を占めており、今後も更なる拡大が期待されている。

物流企業が抱える課題
右肩上がりのEC市場と比例するように、物流業界の需要も年々増加している。特に有形商品のECを成立させるためには「保管場所」や「配送者」は必要不可欠であり、パートナーとなる物流企業の存在は欠かせない。
しかし多くの物流企業では、業界が抱える様々な課題に直面しており、現状の対応で手一杯だろう。そこで物流業界が抱える課題である4つの要点について解説したい。

①小口配送の増加
近年では「B to C」のEC需要に加え「C to C」の取引が活発になっている。一般的な物流企業のメイン事業は、企業の貨物保管や配送で中規模から大規模だったものの、現在ではC to Cの取引拡大に伴い小口配送が増加した。これにより配送量が増加し、ドライバーへの負担が増えている。

②ドライバーの人手不足・高齢化
需要が増す一方で、物流業界は深刻な「ドライバー不足」と「高齢化問題」を抱えている。多くの企業ではドライバーの人手不足が続いており、求人は年々増加傾向にある。さらに総務省の調査によると、ドライバーの約7割40歳以上、その一方で20代のドライバーはわずか10%にも満たないという結果が出た。つまりドライバー人口は年々減少かつ高齢化しており、企業側は人材確保に頭を悩ませている。

③環境への配慮
トラックは走行時に NOx・PM、CO2 などを排出するため、トラック配送による「大気汚染問題」が懸念されている。物流企業の約9割がトラックを使用しているため、ほとんどの企業は環境問題と向き合わなければならない。最近ではクリーンな排気ガスの「天然ガス車」を採択している企業や、トラック以外の輸送にシフトしている企業も増えており、様々な取り組みが行われている。

④同業他社との差別化
需要が増加している今だからこそ、企業の「ブランディング」は重要視されている。また近年では、3PL企業(3rd Party Logistics:荷主に対して物流プランを提案し、包括して物流業務を受託・遂行する企業)が増えており、より包括的な対応できる企業が重宝されている。

課題に対する業界の取り組み

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冒頭でも述べたように、現代の物流業界は「変革期」を迎えている。配送需要の増加、人手不足、さらには環境へ配慮し、業務を行わなければならないのだ。そこで以下では、これらの問題に対して参考となる取り組みや事例を紹介したい。

組織の変化

まず一つ目に「組織体制の変化」が挙げられる。近年では他企業との差別化を図るため、M&Aで組織強化を行う企業や3PLに注力する企業も増えてきた。以下ではそれぞれの参考例を紹介する。

①「M&A」の増加
大手企業を中心にM&A(企業・事業の合併や買収)が活発になっている。
大手物流企業であるSBSホールディングスでは、2020年11月に東芝の物流子会社である「東芝ロジスティクス」を買収した。SBSホールディングスでは、リコーグループの「リコーロジスティクス」を2018年に買収しており、今回のM&Aで更なる事業拡大を目論んでいる。
東芝ロジスティクスを傘下としたことで、東芝ロジスティクスが所有していた倉庫面積が20万坪が加わり、SBSグループの借庫も含めた倉庫所管面積は70万坪まで拡大された。保管スペースの増加は、仕事量の増加につながるため重要である。今後はリコーや東芝のネットワークを駆使し、国内事業だけでなく欧米やアジアなどの「海外事業」にも注力していく。

事例:SBSホールディングス株式会社、東芝ロジスティクスを買収

参照:物流の専門誌カーゴニュース
「何でもできる物流会社になった」=SBSHD・鎌田社長

②「3PL企業」の増加
包括的な取り組みを行い、同業他社との差別化を図る企業が増加している。近年では荷主企業の物流を一括で請け負う3PL(3rd Party Logistics)が大手企業を中心に増えており、3PL企業と現場オペレーションに特化した企業の二極化が進んでいる。
3PL企業の中でも、食品・EC・アパレルなど様々な分野があるため、自社のノウハウを活かしたブランディングが重要だ。3PL企業では、現場処理能力よりもコンサルティング能力やコントロール能力が必要であり、顧客ニーズに合わせた提案が肝となる。

配達方法の変化

そして二つ目に「配達方法の変化」が挙げられる。物流業界の課題には、環境問題や物量に対するドライバー不足など「配送」にまつわる話が多い。以下ではドライバーや環境へ配慮した取り組みについて紹介する。

①モーダルシフト
モーダルシフトとは、輸送時のCO2削減を目的とし、トラックなどの自動車貨物輸送を鉄道や船舶へ転換することを指す。1トンの貨物を1km運ぶ際のCO2の排出量を比較すると、トラックが233gに対し、鉄道は22g、船舶は39gまで抑えられる。そのため多くの企業では長距離輸送の際に、鉄道や船舶を使い環境への配慮を行っている。
日本マクドナルドでは包装材の輸送をトラックから鉄道コンテナに変更したことで、従来のCO2排出量を約65%削減している。

事例:日本マクドナルドが包装材輸送をモーダルシフト

②共同配送
共同配送とは運送を考えている企業(荷主)が協力し、それぞれの商品を同じトラックやコンテナに積んで配送する方法である。これはCO2の排出量を削減し、かつドライバー不足の解消、配送費用の削減に効果的だ。大手ビール会社であるアサヒビール、キリンビール、サントリービール、サッポロビールでは、共同して自社商品の配送を行っている。

事例:ビール4社、共同配送広がる 荷役台回収も協力 CO2排出量削減へ

③DXの導入
DX(Digital Transformation)とは、進化したデジタル技術を浸透させ、人々の生活をより良いものへと変革させることで、近年あらゆる業界で注目されている考えである。
物流業界におけるDXは、トラックの自動運転やドローン配送の活用、さらにはドライバーの業務改善のためのシステム導入などが考えられ、環境問題への配慮やドライバーの負担軽減に効果的である。最近ではソフトバンクと日通の合弁会社が、物流事業者向け配車支援サービスのスマートフォンアプリをリリース。配車管理が効率的になる仕組みを提供している。

事例:ソフトバンク・日通/合弁会社が配車支援のスマホアプリ提供

まとめ

物流企業が生き残るためには、時代のニーズに合わせて変化し続けることが重要である。また業界が抱える課題と真摯に向き合い、一つずつ改善しなければならない。
その策として今まさに注目されているのが「DX」つまり、データやデジタル技術を活用した、業務やビジネスモデルの改革である。各企業が業界の激しい変化に対応するためには、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土の変革は必須であり、この変革が活発になればなるほど、各企業の個性が磨かれ、物流業界は飛躍的な進化を遂げるはずだ。
そのため次回は、実際の物流業務で採用されている「DX事例」を掘り下げ、各企業の新しい取り組みを紹介したい。実際の事例から、読者が日々模索している業務改善の糸口が提供できることを願っている。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

参考

参照:国土交通省 モーダルシフトとは
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/modalshift.html
https://saiyo-kakaricho.com/wp/webma/laborshortage_driver/
https://www.ebisumart.com/blog/ec-rate/
https://gentosha-go.com/articles/-/22087
https://i-common.jp/column/corporation/logistics/

記者紹介

田原 政耶

1992年生まれ、東京都出身。 大学卒業後、大手空間ディスプレイ会社にて施行従事者として、様々な空間プロデュース案件に携わる。現在はベトナムへ移り、フリーライターとして活動中。
実績:月刊EMIDASベトナム版 「ベトナムものづくり探訪〜クローズアップ製造業〜」連載

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