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ロジスティクス研究部

当研究部では、物流業界を様々な観点から研究し、業界の発展とサービス向上のヒントを発信していきます。

2021.08

第十四回:物流とDXー 配送管理における最新DX事例

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本連載ロジスティクス研究部では「物流とDX」をテーマに、物流業界における*DX事例を特集している。第十四回目となる今回は「配送管理」をテーマに、DX化を図る企業の事例を紹介していく。
今回紹介する3つの事例は、2021年にリリースもしくは実験されている最新の事例だ。各企業の動向を知り、自社の取り組みを考えるきっかけとなれば幸いである。

*DX(Digital transformation=デジタルトランスフォーメーション)
データやデジタル技術を活用した業務やビジネスモデルの改革のこと。多くの物流企業では現在、作業の効率化やコストの削減、他社との差別化を図るため様々な取り組みを実施している。

【事例1】独自開発した配送管理システム「とらっくる」の本格始動(アスクル)

内容:配送管理システム「とらっくる(仮称)」
企業:アスクル株式会社
https://www.lnews.jp/2021/06/n0630412.html

概要

事務用品を中心とする大手通信販売会社「アスクル株式会社(以下:アスクル)」では、独自開発した配送管理システム「とらっくる(仮称 ※以下:とらっくる)」を、配送パートナーへ提供することを2021年6月に発表した。これは、自社物流によって蓄積したビッグデータなどを活用して開発した配送管理システムである。配送パートナーには、システムが搭載されたスマートフォン端末が支給される。この端末を利用すると、配送先の駐車スペースなどの情報や、道路の混雑状況が加味された配送ルート計画などの自動生成が可能だ。さらに配達日時の変更や不在再配達依頼などの機能も充実しており、顧客対応の品質向上も期待できる。

システムの特徴

①ドライバーの配送業務の負担軽減
「とらっくる」を活用する配送パートナーには、本システム搭載のスマートフォン端末が貸与される。この端末を使用することで、配送ルート計画作成のほか、届け先に関するドライバーナレッジ情報の確認など配送に関わるあらゆる業務が対応可能だ。最近では時間指定や置き配などの柔軟な対応が求められるが、このシステムを使うことで、ドライバーの配送業務の負荷が軽減される。

②お客様対応のサービス品質の平準化
「とらっくる」は、自社物流が蓄積されたビッグデータが活用されており、支給されるスマートフォン端末には様々な情報が搭載されている。つまり端末を持っている配送パートナーは、自身の経験に加えてアスクルが提供するデータが活用できるのだ。この背景には、どの配送パートナーでも安定した配送が行えるよう、サービス品質を平準化する狙いがある。

【事例2】ブロックチェーン技術を活用した、物流倉庫向け配送システム「Hacologi」の開発(中西金属工業)

内容:配送システム「Hacologi」
企業:中西金属工業株式会社
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000061082.html

概要

中西金属工業株式会社は、コンベア・物流・マテハンシステムなど倉庫自動化サービスを提供する輸送機事業部が中心となり、物流倉庫向け配送システム「Hacologi」を2021年4月に正式リリースした。このシステムは、ブロックチェーン技術を活用した配送システムで、日々行われている「手配」~「納品」の工程をデジタル管理する。これにより配達中の責任の所在を信頼性の高い情報として保持しつつ、手入力のミス軽減・不正配達の撲滅・煩雑な伝票管理の軽減などが期待できる。また「Hacologi」は、2021年6月に*IT World Awards®2部門にて金賞を受賞。国外からの注目度も高いシステムである。

*IT World Awards®
米国シリコンバレーで活動する「Network Products Guide」が主催する、幅広い業界有識者が積極的に参加して年間における実績や認知度を評価する表彰プログラム。

システムの特徴

①配送に関わる企業と同じデータを共有可能
自社内のみのデータ管理ではなく、配送に関わる顧客、製造元、配送業者の3社を繋ぐ。コンセンサスアルゴリズムにより、正しい配送物のステータスを必要なときに必要な担当者が状況を閲覧できる。

②配送物に関する責任の所在を明確化
紛失など万が一の事故発生時に備え、*スマートコントラクトにより、荷物の受け渡し時には契約が成立。責任の所在が明確化できる。

*スマートコントラクト
1994年にニック・スザボが提唱した「契約の自動化」を意味するコンピュータプロトコル。人の手を介さずに、スムーズな契約が実行できる。

③煩雑な伝票管理を排除しコスト削減
送り状や見積、請求などをデータ管理することで、簡単に検索可能。また関係する企業で合意の取れたデータを保管するため、社内だけでなく取引先ともスムーズなコミュニケーションが期待できる。

④人的ミスを軽減
電話での「言った言わない」やFaxの不達を無くし、正しいデータを保存する。数字の変更に関しても変更履歴はデータとして保管されるため、いつ誰が修正したかを明確できる。

世界初「AI活用による不在配送問題の解消」に関するフィールド実証実験(JDSC・佐川急便 他)

内容:不在配送問題解消のためのAI活用(フィールド実証実験)
企業:株式会社JDSC、佐川急便株式会社、東京大学大学院 越塚登研究室・田中謙司研究室、横須賀市、グリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合
https://www.sg-hldgs.co.jp/newsrelease/2021/0326_4759.html

概要

株式会社JDSCと佐川急便株式会社、ならびに東京大学大学院 越塚登研究室・田中謙司研究室、横須賀市とグリッドデータバンク・ラボ 有限責任事業組合は、5者共同で「AIと電力データを用いた不在配送問題の解消」に関するフィールド実証実験を行った。これは、2020年10月~12月に横須賀市で150世帯の協力を得て実施した、世界初となる実証実験である。その内容は、「電力データを活用した在宅判定アルゴリズムに基づき、在宅予測・判定を行い、判定を考慮し配送を行う」というもの。そしてその結果、約20%もの不在配達の減少が確認できた。なお今後は改良のために、更なる実証実験を行う予定である。

システムの特徴

①電力データを活用した在宅判定アルゴリズムによる不在率の改善
このシステムは、スマートメーターから得られる電力データを元に、AIが配送ルートを示す。これにより不在配送の削減の効果が確認された。

②ドライバーの経験値(新人/ベテラン/代走)に関わらず、効果が期待できる
本実験では、地域の担当ドライバーや新人ドライバーなど、様々なドライバーで配送を行った。しかし不在率の削減効果は、ドライバー間での差は見られなかった。つまり配送ドライバーの経験値に関わらず、同様の結果が確認できた。

まとめ

今回紹介した3つの事例は、新型コロナウイルスによる配達需要の増加や、人手不足を危惧して生まれたシステムである。このようにDXの重要性を理解している企業は、時代の変化に合わせ、ビジネス変革を行っていることがお分かりいただけただろう。また今回のテーマである「配送」については昨今の情勢により、個々の条件に合わせたフレキシブルな対応が不可欠となってきている。やはり限られた人材で、きめ細やかなサービスを実現させるためには、DXを取り入れた物流システムのアップデートが欠かせない。つまりDXを軸とした作業体制の再構築は、各企業の成長と密接に関係している。

参考資料
アスクル
http://pdf.irpocket.com/C0032/ZhsL/jcak/H3CZ.pdf
https://www.askul.co.jp/kaisya/dx/stories/00016.html
https://www.lnews.jp/2021/06/n0630412.html
https://news.mynavi.jp/article/20210630-1912648/

Hacologi
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000061082.html
https://service.hacologi.com/
https://bittimes.net/news/92214.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000061082.html

TODOCUサポーター
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2104/12/news028.html
https://dx-with.jp/pr_times/17806/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000034021.html

TODOCU(トドク)
https://weekly-net.co.jp/news/100016/

TODOCUクラウド
https://weekly-net.co.jp/news/112825/

ハコベル
https://www.ntt.com/business/lp/fesaas/voice/005.html

ハコベル×NTTロジスコ
https://www.nttlogisco.com/info/2021/1720/

配車管理サービス MOVO Dispatch
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000103.000018703.html

AI技術を用いて自動で最適な配車・配送計画を作成するアルゴリズム『LOG』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000081007.html

世界初「AI活用による不在配送問題の解消」フィールド実証実験にて、不在配送を約20%削減
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000040467.html
https://www2.sagawa-exp.co.jp/newsrelease/detail/2021/0326_1678.html
https://ledge.ai/sagawa-express-ai/

米ウォルマート、「完全無人」で配送 21年に一部州で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN15CDW0V11C20A2000000/

記者紹介

田原 政耶

1992年生まれ、東京都出身。 大学卒業後、大手空間ディスプレイ会社にて施行従事者として、様々な空間プロデュース案件に携わる。現在はベトナムへ移り、フリーライターとして活動中。
実績:月刊EMIDASベトナム版 「ベトナムものづくり探訪〜クローズアップ製造業〜」連載

DAISEI VEHO WORKS

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