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ロジスティクス研究部

当研究部では、物流業界を様々な観点から研究し、業界の発展とサービス向上のヒントを発信していきます。

2021.03

第九回:物流とDXー倉庫作業を効率化する最新ロボット 事例紹介

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第九回ロジスティクス研究部——。前回までは「物流業界の基礎」をテーマに、業界の歴史や業界全体の基本知識を紹介してきたが、今回より「*DX」に焦点をあて、物流業界におけるDX事例について特集する。その中でも「倉庫作業を効率化する最新ロボット」に着目し、2つの事例を紹介していく。
*DX(Digital transformation=デジタルトランスフォーメーション)
データやデジタル技術を活用した業務やビジネスモデルの改革のこと。多くの物流企業では現在、作業の効率化やコストの削減、他社との差別化を図るため様々な取り組みを実施している。

【事例1】カインズの物流センター(千葉県東金市)

導入内容:高積み対応のマスターレス混載デパレタイズロボット
企業:株式会社Mujin/株式会社オークラ輸送機
https://www.mujin.co.jp/

事例の概要

大手ホームセンター「カインズ」の物流拠点「東金流通センター(千葉県東金市)」は、高所作業の効率化を図るため「高積み対応のマスターレス混載デパレタイズロボット」を2021年2月より導入した。これは高さ2.3mの荷下ろしを自動化するロボットで、事前の商品登録は不要(マスターレス)のシステムを搭載している。そのため混載状態のパレットからの荷下ろしが可能で、なおかつ認識が難しい無地で透明テープが貼られたケース品にも対応できる。

カインズがこのロボットを導入した経緯は「高積みされた荷下ろしの効率化」を図るためである。現在カインズでは、DIY用品から生活雑貨など数多くの商品を販売しており、取扱う商品のサイズは大小さまざま。このような場合、トラック輸送時の積載効率を高めるために、小型商品は大型商品の上に積まれて運ばれることも多く、高積みされた荷物は従業員が下さなければならない。しかし高所作業は通常よりも時間が必要で、場合によっては危険が伴うこともある。これらの問題を解消するために、株式会社Mujinと株式会社オークラ輸送機が共同開発した「高積み対応のマスターレス混載デパレタイズロボット」を導入した。

事例のポイント

①高所作業の効率化を実現
高積みされた荷下ろしは、通常の荷下ろしよりも時間がかかり非効率になることが多い。しかしこのロボットは、サイズ・重さを自動判別し、最適な速度で荷下ろしが可能だ。荷物に合わせ効率かつ安定的な高所作業が実現できる。

②従業員への負担軽減
荷下ろしを人力で行う場合、高積みされた荷物はとくに従業員へ負担がかかる。さらに脚立を使った高所作業は危険が伴うため、従業員は細心の注意を払わなければならない。しかし高所作業を自動化するロボットの導入により、このような問題は解消される。

このロボットは現在カインズの東金流通センターのみで使用されているが、今後は他企業にも展開予定である。

参考資料:
https://www.lnews.jp/2021/02/n0209404.html
https://mujinspire.mujin.co.jp/2021/02/customer-case-cainz/
https://news.livedoor.com/article/detail/19670040/

【事例2】アルペンの物流センター(アルペン小牧ディストリビューションセンター)

導入内容:3Dロボット倉庫システム「ALPHABOT(アルファボット)」
企業:村田機械株式会社
https://www.muratec.jp/logistics/products/alphabot/

事例の概要

総合スポーツ用品メーカー「アルペン」では、物流の主要拠点であるアルペン小牧ディストリビューションセンター内へ、村田機械株式会社の3Dロボット倉庫システム「ALPHABOT」の導入を決定した。これは村田機械株式会社が米国の物流ロボットメーカーであるAlert Innovation(アラート・イノベーション)社より技術導入したもので、保管からピッキングまでロボット台車で完結させたシンプルな仕組みの自動倉庫システムである。導入に際しアルペンでは、物流業務の諸作業(保管補充・ピッキング・仕分け・梱包の工程)において、約6割の業務削減を目標に掲げている。

このロボット倉庫システムを導入した経緯は「コロナ禍におけるEC需要への対応」および「従業員による密の回避」を実現するためである。2021年現在、新型コロナウイルスの影響で物流需要は急激に高まり、その一方で現場は人手不足に悩まされている。しかしながら安易に増員すると、今後は倉庫内クラスターの危険が高まるだろう。そのためアルペンでは、DXを推進した新たな物流体制を構築することで問題解決を目指している。

技術紹介

①ロボット台車「BOT(ボット)」による作業のシステム化
システムの核となるロボット台車「BOT」は、保管・搬送・仕分け・ピッキングのすべてを実行できるロボットである。またすべての保管棚やピッキングステーションにアクセスできるため、1つのシステムでオーダーピッキングが行える優れものだ。さらにこの「BOT」は単独で水平・上下方向の移動が可能なため、作業者まで荷物を届けるためのコンベヤなどの設備は不要。非常にシンプルなシステムである。

②冷凍・冷蔵倉庫に対応する機器
ロボット台車「BOT」は、常温以外の環境にも対応可能だ。常温・チルド・冷凍の3温度帯を組み合わせたシステム構築ができ、米国のスーパーマーケット「ウォールマート」でも導入実績がある。日本において、当システムの導入はアルペンが初となる事例。そのため今回の実績を皮切りに、今後は様々な業態への導入が期待されている。

事例のポイント

①作業のワンプロセス化による仕分け・出荷効率の向上
先ほど紹介した通り「BOT」は、様々な物流業務を行うロボットである。そのため「従業員への労働負担の軽減」と「ヒューマンエラーの削減」が期待できる。つまり従業員に依存しない安定的な倉庫の稼働が実現できるため、急増する物流需要に対応できる策と言える。

②故障時のトラブル軽減
従来の自動倉庫では、トラブル発生時に出荷できないリスクを抱えている。一方で「ALPHABOT」の場合、実際に駆動しているのはロボット台車「BOT」だけであり、システム全体のトラブルは少ない。また万が一「BOT」が故障した際は、他の機器でリカバリーができる。そのためシステム全体が停止する心配はない。

アルペンでは現在、2021年7月稼働に向けてシステムを準備している。また今後は他センターにも導入する予定だ。

参考資料:
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP538721_W0A800C2000000/
https://www.muratec.jp/corp/news/2020/20200807.html
https://www.robot-digest.com/contents/?id=1583890158-544504&dp=2

まとめ

今回紹介した事例は倉庫作業を一部自動化し、作業自体の効率を高めるDXだ。このように従業員に依存しないオペレーションは、物流倉庫の安定的な稼働を意味する。物流需要が年々高まる現代において、今回の事例のようなロボットやシステムの導入は、今まで以上に重要視されている。DX導入実績は、物流企業の伸びしろを決定する根幹となるだろう。

記者紹介

田原 政耶

1992年生まれ、東京都出身。 大学卒業後、大手空間ディスプレイ会社にて施行従事者として、様々な空間プロデュース案件に携わる。現在はベトナムへ移り、フリーライターとして活動中。
実績:月刊EMIDASベトナム版 「ベトナムものづくり探訪〜クローズアップ製造業〜」連載

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