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ロジスティクス研究部

当研究部では、物流業界を様々な観点から研究し、業界の発展とサービス向上のヒントを発信していきます。

2021.06

第十二回:マッキンゼーレポート(2020年3月掲載)から読み解く、2021年の物流予測への新たなアプローチ

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本連載ロジスティクス研究部では「物流とDX」をテーマに、物流業界における*DX事例を特集している。前回は経済産業省が発表した「DXレポート2」を基に、コロナ禍の日本企業におけるDXの緊急性や必要性を解説した。第十二回目となる今回は、2020年3月に*McKinsey & Companyが発表したレポートを参考に、世界的規模で捉えた「コロナ禍の物流予測」に対する新たなアプローチを紹介していく。

*DX(Digital transformation=デジタルトランスフォーメーション)
データやデジタル技術を活用した業務やビジネスモデルの改革のこと。多くの物流企業では現在、作業の効率化やコストの削減、他社との差別化を図るため様々な取り組みを実施している。

*McKinsey & Company(マッキンゼー・アンド・カンパニー)
アメリカ合衆国に本社を置く大手コンサルティング会社。米国、欧州、アジア、南米、東欧などに100以上の支社をもち、全世界の主要企業を対象にコンサルティングを行う。

*McKinsey & Companyが発表したレポート(2020年3月掲載)
「A fresh approach to logistics forecasting in 2021」
https://www.mckinsey.com/industries/travel-logistics-and-infrastructure/our-insights/a-fresh-approach-to-logistics-forecasting-in-2021#
2020年に巻き起こったパンデミックにより、世界経済とサプライチェーンは変革期を迎えた。2021年以降は従来の履歴から推測する戦略モデルよりも、不確実な未来に備えた予測を行い、ビジネスモデルや複数のシナリオの準備が必要である。以下では2021年の物流情勢および既存戦略のアップデートの必要性、さらに不確実な未来に向けた予測の重要性について紹介する。

2021年の世界の物流情勢とは

2020年に巻き起こった世界的パンデミックは、世界経済とサプライチェーンを混乱させた。世界のGDPは2020年5.2%縮小すると予想されており、現在もなお多くの企業がパンデミックの変化に対応している。本レポートによると、物流企業の大半は「12か月以内に以前の危機から回復したものの、まだ完全なる運用までには至っていない」と回答した。また91%の企業幹部は、2021年の予測を見直す必要があることを認めている。

2020年に行った調査によると、グローバル製造およびサプライチェーン企業の3分の1は「パンデミックにより資材不足やその他のサプライチェーン不足の問題に直面した」と回答した。そのため今後は様々な変化に対応するために、複数(3つ以上)の予測シナリオを作成している。さらに従来のような履歴から推測する戦略モデルよりも、不確実な未来に備えるために従来とは異なる月次レビューが必要であると考えている。

やはり現状の不確実性を考慮すると、従来の発想や戦略では不足の事態への対応は難しい。この状況下で柔軟に対応するには、トップレベルのマクロ経済指標や、前年度の成績に基づいて構築された戦略とはまったく異なる視点をもった戦略が必要だ。とくに2021年は「トップレベルのマクロ経済指標や、前年度の成績などの基本的なビジネス要素を複数の経営戦略シナリオでモデル化し、企業の達成目標をリアルタイムで作成すること」が鍵となる。

従来の戦略をアップデートすべき理由

前項でも触れた通り、現状において従来のビジネス予測モデルは足枷となる可能性が高い。
やはりパンデミックの状況下による従来の企業戦略は、収益減少だけでなく市場シェア減少の危険性があるのだ。企業は、9つのマクロ経済回復シナリオについて、主要な金融市場変数を四半期ごとに追跡する「不確実性キューブ(図1)」により今後の経営方針が検討可能となる。

図1:不確実性キューブ

antwerp-2019990_640従来であれば、内部の履歴データに依存し、戦略や計画を立てる企業も多かったはずだ。しかしパンデミックの状況下では、履歴データのみで戦略を予測することは難しい。つまり企業は不確実性の高い未来を予測するために、信頼できるベースを作成する必要がある。このベースは需要(eコマースの浸透など)と供給(航空貨物で利用可能な腹の容量など)に関連する外部変数を考慮すると、より堅牢なモデルへと成長する。またパンデミック以前は正確であったマクロ経済指標は現在、様々なミクロ市場(たとえば、地理的なサブリージョンや顧客セグメント)の動作を正確に反映していない場合があるため、これらを加味した上で作成する必要がある。

コロナ禍の現状を良くする予測と、4つのアプローチ

Fortunately, today’s data availability and analytics capacity can create forecasting models that meet the external, dimensional, and granular requirements for next year.

幸いなことに、今日のデータの可用性と分析能力により、来年の外部、次元、および詳細な要件を満たす予測モデルを作成できる。

マッキンゼーのレポートを見ると、コロナ禍の現状においても「予測モデルを作成できる」と述べている。この予測モデルは完全ではないかもしれないが、2021年のビジネスのトップラインに最も影響を与える根本的な推進要因としては役立つはずだ。

さらに当レポートでは「企業の達成目標に基づいて構築された経営戦略と事業モデルの数の増加が鍵になる」と予測している。つまり複数の経営戦略および複数の事業モデルを用意し、不確実な未来に備える必要があるのだ。以下ではこのアプローチに対する4つのメリットを紹介する。

今回コロナ禍に迅速かつ柔軟に対応し、デジタル技術を最大限に活用してこの難局を乗
り切った企業と、コロナ禍が収束することを願いつつビジネススタイルの一時的な変更に
とどまり、既存のやり方に固執する企業との差は、今後さらに大きく拡大していく可能性が高い。

1:A broad range of possible outcomes.(考えられる結果の広い範囲)

「複数の経営戦略」は、考えられる結果よりも広範囲にわたる予測を可能とする。つまり2021年に向けて経営幹部をより適切に配置できる。これは不確実な未来に対する対策やストレステストにとってとくに重要な要素だ。

2:High-frequency data.(高頻度データ)

企業の達成目標は多くの場合、リードや販売よりも速く追跡される高頻度データに基づいて構築されている。したがって、達成目標に基づいた企業ダッシュボードは需要を予測し、予測されたモデルの変化がトップラインに影響を与える前に強調的に表示される。

3:External data.(外部データ)

市場はパンデミック前の現状から大きく変化しているため、企業の履歴データを使用してトレンドラインを予測することは難しい。したがって正確な予測を作成するには、企業の事業モデルに影響を与える外部データに基づいて新しいベースラインを構築する必要がある。

4:Fact bases. (事実ベース)

達成目標ベースの計画は、従来の予測に影響を与える「リーダーシップの直感」の一部を定量化できる。(例:eコマースの普及率が高まると、あるビジネスは成長する一方、別のビジネスは需要が低下するという予測)。

これら1~4のアプローチにより、企業はこの不確実な時期のより強力な予測ができる。

予測から具体的な計画まで

世界的パンデミックにより、2020年のデータが信頼できない点を考慮すると、2021年は従来と異なる計画をしなければならない。そして今後の予測は企業の達成目標に基づいて構築され、具体的なビジネスプランに変換する必要がある。次の6つのステップは、当レポートにて「具体的な計画を作る上で必要な要素」として紹介されている。

1:Build the recovery strategy.(回復戦略の構築)

Build the recovery strategy. For the leadership team, the initial focus should be on steering the company through the strategic trade-offs that need to be made—such as growing margins or defending market share. These inform capital allocation, risk thresholds, and accountability, and help determine the most important business metrics for next year.

経営チームにとって最初のポイントは「マージンを伸ばすか、もしくは市場シェアを守るか」など、戦略的トレードオフを行う必要がある場合に会社を導くことである。これらは資本配分や説明責任を明確にするため、今後の重要なビジネス指標を決定する際に役立つ要素となる。

2:Use the right drivers for models.(適切な達成目標の選定)

While a data science team works on identifying the drivers and expanding the datasets used for forecasting, business experts should help decide which drivers make sense and if modeled impact is in line with leadership’s intuition.

データサイエンスチームは、達成目標の特定と予測に使用されるデータセットの拡張に取り組んでいる。これに対し経営陣は「どの達成目標が理にかなっているか」「モデル化された影響がリーダーシップの直感に沿っているか」などを判断する際に役立つ。

3:Set and communicate targets. (目標設定の伝達)

Given the uncertainty, next year might present an opportunity to change some of the incentives and targets used for a company’s performance management. Companies could look, for example, for targets that are tied less directly to outcomes (which are not always in the team’s control) but instead relate to the implementation of the recovery strategy, drivers being monitored, or actions required. In addition, not all variables need to be short-term focused. For instance, managing attrition—which may not affect financial performance in 2021 but will do so in the long term—could be useful for some teams.

2021年は企業の業績管理に使用されるインセンティブと、目標のいくつかを変更する機会を提供する必要がある。これらは2021年の財務実績には影響しないかもしれないが、長期的には影響を与える可能性の高い「離職」の管理は、一部のチームにとって役立つ可能性がある。

4:Create the first version of the budget and plan. (予算計画の作成)

Perform the full calculation of external and internal drivers, apply decisions and targets to influence them, and let the model produce the resulting financial budget and (re)forecast. Planning may need to begin with high-level market data for next year. By contrast, initiatives that start with data-specific business units or regions should largely be focused on exceptions due to real idiosyncrasies within their respective domains.

外部および内部の推進要因の完全な計算を行い、それらに影響を与える決定と目標を適用し、事業モデルに結果の財務予算と(再)予測を生成する。計画は、来年の高レベルの市場データから始める必要があるだろう。また対照的に、データ固有のビジネスユニットまたは地域で始まるイニシアチブは、それぞれのドメイン内の実際の特異性による例外に主に焦点を当てる必要がある。

5:Set up regular, better reviews. (定期的レビューの実施)

In this environment, comparing month-to-month revenue does not generate as many insights as understanding what is affecting revenue, where, and how. Therefore, reviews should probably happen more frequently and with more granularity than in prior years. These reviews are not only to ensure accountability from teams but also to collect and learn from their feedback. Learnings from such reviews can help to both adjust model assumptions and identify the reactions and decisions that are working. Reviews that focus on actionable insights are always more valuable—now more than ever.

定期的なレビューは、チームからの説明責任を確保するだけでなく、チームのフィードバックを収集して学習することも目的としている。このようなレビューから学ぶことは、モデルの仮定を調整し、機能している反応と決定を特定する際に役立つ。実用的な洞察に焦点を当てたレビューは、今までよりも高い価値をもつ。

6:Ensure key enablers are in place.(現実に向けた重要な鍵の配置)

Acknowledging that many new processes and approaches are being implemented at the same time, managing performance will not be solved by complex mathematical modeling alone. The right data can help measure and monitor business drivers, determine the right architecture and technology to embed these within a company’s systems, and enable the application of the tenets of good change management. In short, they can help companies to formalize these new ways of working and make plans for next year. For many companies, these changes will constitute a transformation of how they operate.

適切なデータは、企業の達成目標の測定と監視、企業のシステムに組み込むための適切な構造とテクノロジーの決定、および優れた変更管理に役立つ。つまり企業がこれらの業務を形式化することは、来年の計画を検討する際の手助けになる。多くの企業にとって、これらの変更は運営方法の変革となる。

まとめ

企業の達成目標に基づいた予測は、事業モデルに対するより堅牢なアプローチであり、新型コロナウイルスの危機に対応する上で有益である。この不確実な未来に備えるためには、企業は既存の方法やデータに囚われず、複数の予測シナリオを考案することが重要だ。時代の変化に合わせて柔軟に対応できる企業は、業界の未来を牽引する組織になるだろう。本レポート記載の通り、不確実性の高い未来に対してどのようなアプローチするか。今まさに試されているのだ。

記者紹介

田原 政耶

1992年生まれ、東京都出身。 大学卒業後、大手空間ディスプレイ会社にて施行従事者として、様々な空間プロデュース案件に携わる。現在はベトナムへ移り、フリーライターとして活動中。
実績:月刊EMIDASベトナム版 「ベトナムものづくり探訪〜クローズアップ製造業〜」連載

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