TOP > ロジスティクス研究部 > 第十回:物流とDXー省人化を実現する最新自動倉庫 事例紹介

ロジスティクス研究部

当研究部では、物流業界を様々な観点から研究し、業界の発展とサービス向上のヒントを発信していきます。

2021.04

第十回:物流とDXー省人化を実現する最新自動倉庫 事例紹介

antwerp-2019990_640

本連載ロジスティクス研究部では「物流とDX」をテーマに、物流業界における*DX事例を特集している。第十回目となる今回は「省人化を実現する自動倉庫」と題して、自動倉庫システムの最新事例を紹介していく。

前回特集した倉庫用ロボットは、作業過程のポイントとして導入が多い機器だ。しかし今回特集する自動倉庫は、ロボットよりも幅広い作業で自動化ができる。つまり自動倉庫はロボットよりも、総合的な作業で省人化が実現できるシステムなのだ。その中でも当記事では、2020年に導入・販売された2つのシステムについて触れていきたい。

*DX(Digital transformation=デジタルトランスフォーメーション)
データやデジタル技術を活用した業務やビジネスモデルの改革のこと。多くの物流企業では現在、作業の効率化やコストの削減、他社との差別化を図るため様々な取り組みを実施している。

【事例1】APT 三次元シャトル式倉庫

導入内容:シャトル式自動倉庫「Hive」
企業:株式会社APT
https://www.lnews.jp/2020/06/m0601404.html

事例の概要

様々なファッションブランドのEC運営を行う「株式会社AMS(以下AMS)」では、自社のロジスティクス内へ、株式会社APT(以下APT)が取り扱う倉庫内ロボットストレージシステム「Hive」を2020年6月より導入した。これは物流テック領域で最新のハードウェア技術を有する中国のGALAXIS社とAPTが日本向けに共同開発した自動倉庫で、前後・左右・上下に自在に動く三次元シャトル型倉庫システムである。

AMSが「Hive」を導入した背景には、将来の労働人口の減少による人手不足が大きく関係している。実際AMSの現場では、人件費や配送料の高騰に直面し、倉庫作業の自動化を検討していた。数ある自動倉庫の中でも「Hive」は、わずか10ヶ月という期間で納品が可能なシステムである。多くの国内のメーカーは発注から実稼働まで約2年間ほど必要になるため、早期導入を目指していたAMSにとって、「Hive」のスピード感は導入の決め手となった。

技術紹介

①「上下」を加えた3Dモーション
通常の自動倉庫は前後・左右方向の可動であるため、どうしても倉庫上部の空間に無駄が生じる。しかし「Hive」ではこれらの動きに加え、上下方向も可動するため、倉庫上部の空間が利用でき、一般的な平置き倉庫よりも収納効率が約2倍も向上する。

②自由なレイアウトを可能とする5つのモジュール
「Hive」は、シャトル・コンベヤ・ラック・リフター・ボックスという5つのモジュールで構築されたシステムである。このモジュールを一つ一つ組み合わせて使用するため、顧客のニーズや倉庫の特徴に合わせた柔軟なレイアウトが可能だ。従来であればデッドスペースとなっていた柱周りなども有効活用できるため、倉庫の構造や目的に合わせた設計が実現できる。

導入の効果

①ピッキング工数の削減
この「Hive」はモノを自動化システムで人の手元に搬送し、歩かず探さないピッキング作業を支援する仕組みである。実際に導入したAMSでは、1つ辺りの作業時間が30~40秒になり、ピッキング工数が約3割も削減できた。これは倉庫作業の生産性向上に加えて、働いているスタッフの体力的な面でも大きなメリットとなった。

②保管効率の向上
「Hive」はレイアウトの自由度が高く、デッドスペースになりやすい柱周りや上部空間が有効活用できる。「Hive」を導入後、AMSでは倉庫の保管効率が2倍ほど向上した。

参考資料:
https://www.amsinc.co.jp/press/1576/
https://www.yourlogi.com/column/lip-news/200601
https://n-apt.com/hive/

【事例2】イトーキ シャトル式立体自動倉庫システム

導入内容:シャトル式立体自動倉庫システム「SAS-R」
企業:株式会社イトーキ
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP529924_Y0A220C2000000/

事例の概要

株式会社イトーキでは、高速化・小型化を追求したシャトル式立体自動倉庫システム「システマストリーマー」の新機種「SAS-R」を2020年2月より発売開始した。この機器は小型化・軽量化・高速化に特化したシャトル倉庫システムで、大手パソコンメーカーや食品メーカーや自動車業界などの様々な物流現場で導入されている。

「SAS-R」は、物流センターの高速・高度なオペレーションを実現させるために開発されたシステムである。物流業界は現在、小口・多頻度の配送サービスが増加しており、これらの需要に対応するには高速・高度なオペレーションを実現するシステムが必要になる。
イトーキでは「高速化・小型化」をコンセプトに、数多くの納入実績を誇る自動倉庫システムのシステマストリーマー SASを改良し、新機種「SAS-R」の発売を開始した。

技術紹介

①商品の高速な入出庫機能
⼤量に保管されている商品の中から、購⼊者別・配送先店舗別などに仕分けて出庫するには⾼い処理能⼒が鍵となる。この「SAS-R」は、元モデル(システマストリーマー SAS)の制御⽅式の⾒直しを行い、仕分けにおける処理能⼒を55%も向上させた。

②世界最速レベルの垂直昇降スピードを実現
「SAS-R」では、搬送機器であるドーリーと昇降移載機であるリザーバーの⼩型化・軽量化に成功。これにより速度や加速度が飛躍的に向上し、垂直昇降スピードに関しては世界最速レベルを実現している。

導入の効果

①設置⾯積の削減
「SAS-R」は機器自体がコンパクトだ。そのため⼩さな⾯積で設置でき、効率のよい商品保管が可能である。さらに商品を保管するラックの設置⽅法を⾒直しを図り、元モデル(システマストリーマー SAS)よりも設置⾯積が20%も削減できた。

②軽量化と効率化による消費電⼒の削減
本体の軽量化により、機器を動かすモーターが低容量タイプへと変更となった。これにより従来よりも少ない電力での稼働が実現された。消費電⼒の削減は、運営コストの低減だけでなく地球環境保全にも繋がる。

参考:
https://www.itoki.jp/solution/distribution/case.html
https://www.itoki.jp/press/2020/2002_sas-r.html
https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0529924_02.pdf

まとめ

今回紹介した事例は、倉庫作業において省人化を実現するDXの事例である。倉庫作業の省人化は、運営コストの削減や労働者の負担軽減さらには安定的な倉庫稼働など、物流企業にとって様々な利点をもたらすに違いない。とくに自動倉庫は労働人口が減少している物流業界を救う鍵であり、最新事例は今後の物流業界の在り方を変えるシステムになるだろう。

記者紹介

田原 政耶

1992年生まれ、東京都出身。 大学卒業後、大手空間ディスプレイ会社にて施行従事者として、様々な空間プロデュース案件に携わる。現在はベトナムへ移り、フリーライターとして活動中。
実績:月刊EMIDASベトナム版 「ベトナムものづくり探訪〜クローズアップ製造業〜」連載

DAISEI VEHO WORKS

採用情報はこちら