TOP > ロジスティクス研究部 > 第五回:物流業界の仕組み1 ー運送業ー

ロジスティクス研究部

当研究部では、物流業界を様々な観点から研究し、業界の発展とサービス向上のヒントを発信していきます。

2020.11

第五回:物流業界の仕組み1 ー運送業ー

professional-transport-4458797_640

日本の物流業界には約75,000者もの事業者が存在し、その約9割が“運送業”を生業としている。 その運送手段は船・飛行機・自動車など多岐にわたり、中でもトラックを使用したトラック運送事業は国内の需要が高く、その数は62,000者以上にもおよぶ。つまり日本の物流を大きく支えている事業こそ、この“運送業”であり、物流の循環を促進させるためには欠かせない存在なのだ。しかしながら運送業について概要を語られる機会は少なく、そのしくみを把握している者は限られるだろう。そこで今回は、物流の中でもわたしたちの暮らしに馴染み深い“運送業”に注目し、その仕組みについて解説していく。

運送業のしくみ

物流の中でも消費者に近く、暮らしに馴染みのある運送業。その中でもトラック事業は国内運送の主軸となっている。以下では、運送業の中でも事業者数の一番多い“トラック運送業”のしくみとして、事業内容・原価構成・運賃について紹介する。

運送業とは

運送業とは、運賃や送料を受け取り貨物の運送をする事業のこと。その手段には陸路・空路・海路があるが、日本国内の運送はトラックを使った陸路が主流である。貨物を届ける配送作業はもちろんのこと、トラックや船に荷物を積み込む荷役作業や、運送に関わる伝票作成・処理など事務作業なども運送業に含まれている。

貨物自動車運送業とその種類

貨物自動車運送業とは、トラックなどの自動車を使用して行う運送業のこと。日本の運送業で最も事業者の多い“トラック運送事業”には大きく分けて2つの種類が存在する。

①一般貨物自動車運送事業
不特定多数の荷主の需要に応じ、自動車を使用し有償にて荷物を運送する事業のこと
②特定貨物自動車運送事業
単一特定の荷主の需要に応じ、自動車を使用し有償にて荷物を運送する事業のこと

一般貨物と特定貨物の違いには”荷主の数”が関係している。
一般貨物自動車運送事業では、不特定の荷主の需要に対し運送が可能となるため、宅配便などの小口需要が高い。一方で特定貨物自動車運送事業は、運送事業者の売り上げが特定の荷主1社(もしくは1人)かつ、荷主の総輸送量の80%以上を担う場合に限り認定される事業であるため、条件としては非常に厳しく、コンテナ輸送など特殊な仕事が多い。それゆえ事業者数の差も歴然である。トラック運送事業者のうち、75%以上もの事業者が一般貨物自動車運送事業に該当するのだ。

他にもトラック以外の自動車(軽自動車や二輪自動車)を使用して運送する“貨物軽自動車運送事業”や、自社でトラックなどの運送手段を持たず、荷主からの依頼を受けて実運送事業者に貨物の輸送を依頼する“貨物利用運送事業”などがあり、その事業形態は多様である。

運送サービスの変化

第二次世界大戦後のめまぐるしい経済成長にあわせ、運送業は大きく進化を遂げた。当時は工場やお店など会社が荷主であるB to B(Business to Business)のビジネスモデルが主流であったが、1990年に施行された貨物自動車運送事業法により運送業界の規制が緩和され、様々な運送業者が出現した。現在では、一般消費者を対象とするB to C(Business to Consumer)を行う業者も増えており、主に引越しや宅配便などのサービスがこれに該当する。

運送原価の構成

運送会社の原価は下記の8つから構成されている。

①人件費:ドライバーの給与
②燃料油脂費:トラックの燃料代
③修繕費:トラックのメンテナンス費
④減価償却費:トラックの費用
⑤保険料:トラックやドライバーに対する保険
⑥施設使用料:倉庫などで一時保管する際の費用
⑦事故賠償費:輸配送時、一時的に備えた費用
⑧道路使用料:有料道路使用時の費用など

運送業の原価は人件費の割合が最も高く、総経費の約40%を占めている。つまり企業にとって人材は自社の大切な資源であり、運送業が労働集約型産業であることを意味する。
また近年では、燃料油脂費の高騰が進んでいるため運送原価は年々増加傾向にある。

運賃の算出方法

トラック運賃の算出方法は、走行距離(もしくは稼働時間)と距離単価によって決定する。
走行距離(稼働時間)の要素には運送距離の他に、走行の時間帯・納品条件・貨物の特性などが加味されて金額を決定する。また距離賃率は、燃料費・タイヤチューブ費・修繕費が考慮された金額を指す。

トラック運賃=走行距離(km)× 距離賃率(円/km)
稼働時間(h) × 距離賃率(円/km)

また2003年に改正された物流二法により、トラック配送の運賃は運送事業者の自主性に委ねられた。現在では以下3種類の運賃体系が主流となっている。

①積合運賃:一つの車両に複数の荷主の貨物を積み合わせて運ぶときの運賃
②貸切運賃:トラックを貸し切る際の運賃
③特殊運賃:タンクローリーなどの特殊車両に適応される運賃

積合運賃とは一つの車両に複数の荷主の貨物を積み合わせて運ぶときの運賃であり、宅配便やメール便などの小口配送に適している。一方で、物量が多いときや緊急の際などトラックを貸し切る場合は積合運賃とは異なる運賃体系で算出される。

運送業界の構造とビッグカンパニーの存在

architecture-22039_640

日本の運送業界では、保有車両台数100台以下の中小事業者が全事業者数の約98%にもおよぶ。こうした中小事業者は、大手の元請け事業者のもとで下請け業務を行うことが多く、業界を先導するビッグカンパニーの存在は大きい。
以下では、日本の運送業界を先導するビッグカンパニーを紹介する。

ヤマト運輸株式会社(ヤマトホールディングス株式会社)
宅配便のシェアNo.1である「宅急便」を強みとする企業。2019年に創業100周年をむかえ、現在は従業員の働き方改善や、仕事の効率化を図るべく様々なロボット技術などに力を入れている。

佐川急便株式会社(SGホールディングス株式会社)
ヤマトホールディングスに次ぐ国内二位の宅配便シェアを誇る企業。佐川急便株式会社ではCSR活動に注力しており、国内で保有する車両の4割は環境に優しい環境対応車両を導入している。(※CSR活動:業が社会に対して責任を果たし、社会とともに発展していくための活動)

日本郵便株式会社(日本郵政株式会社)
明治4年の郵便制度創設以来、全国にある郵便局をネットワークの拠点とし様々なサービスを提供してきた日本最大の物流企業。国内では上記の企業同様、宅配便やメール便の業務に加え包装用品の販売などを行っている。

日本通運株式会社
1872年に創業された老舗企業であり、業界トップの売上高を誇るビッグカンパニー。陸路・空路・海路を網羅したグローバルな事業展開が強みである。また国内No.1の倉庫面積とネットワークを保有しており、BtoB向けのサービスが充実している。

SBSホールディングス株式会社
1988年設立。当時なかった「即日配送」という新たな価値とM&Aの積極活動によって成長を続けている大手運送企業だ。最近(2020年11月)では東芝ロジスティクス株式会社を傘下に迎え、更なる事業拡大が予測されている。

まとめ

暮らしのライフラインとして物流の存在は必要不可欠であり、物流業界の市場規模は年々拡大している。その中でも今回紹介した“運送業”は、貨物を目的地まで届ける重要なフェーズかつ物流の根幹部分とも言えるだろう。しかしながら運送業だけでは、物流は完結しない。貨物を必要時期まで保管する倉庫業と結びつき、はじめて物流が成立するのだ。次回は、「物流業界のしくみ2」と題して、貨物の保管・管理を行う“倉庫業”について掘り下げていきたい。

事業者数
https://www.ycg-advisory.jp/industry/logitics/trucking/
https://www.mlit.go.jp/common/001354690.pdf

記者紹介

田原 政耶

1992年生まれ、東京都出身。 大学卒業後、大手空間ディスプレイ会社にて施行従事者として、様々な空間プロデュース案件に携わる。現在はベトナムへ移り、フリーライターとして活動中。
実績:月刊EMIDASベトナム版 「ベトナムものづくり探訪〜クローズアップ製造業〜」連載

DAISEI VEHO WORKS